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朝日の中の黒い鳥

朝日の中の黒い鳥
L'Oiseau noir dans le Soleil levant
ポール・クローデル 著
内藤高 訳
(1988年 講談社学術文庫)


フランスの詩人であり劇作家であり、数多くの著作を残したポール・クローデル。
外交官としても知られますが、彫刻家のカミーユ・クローデルの弟と言ったほうが、日本では馴染み深いかもしれません。

本書は、大正10年(1921)に駐日大使として来日したポール・クローデルが、日本の印象、あるいはその文化・自然に対する理解や考察を綴った随筆集。

タイトルの『朝日の中の黒い鳥』は、朝日=日出ずる処から連想される日本、黒い鳥=「クロドリ」と音の近いクローデルを表しているのだそうです。

目の前の風景がクローデル自身の中にあるイメージと重なって、時として現実世界とクローデルの心象風景が行き交い融合する。
クローデルの中では理路整然とした論理が展開されているであろう事柄も、読んでいるこちらには、果たしてなにを云わんとしているのかわかりづらく、読み進むのに忍耐を要することも。
詩人としてのクローデルの感性が、詩の類をほとんど理解できない私に不向きなことも原因で、読む人が読めばちゃんとわかるのでしょうが、私には難解に感じられる随筆集でした。

それでも、能やアントニン・レイモンドの建築に興味が湧き、日本の自然の捉え方も新鮮に映りました。

私が一番心を奪われた作品はと言うと、関東大震災のときの東京・横浜の様子を克明に描いた「炎の街を横切って」とその「一年後」を描いた作品です。
クローデルの目の前に繰り広げられた恐ろしく悲惨な光景に息を呑み圧倒されると同時に、東日本大震災も思い出されて昔の出来事という感じがしませんでした。

最後に、この本を読むきっかけとなった話をちょっと。
『朝日の中の黒い鳥』には、見開き2ページにしか満たない「雉橋の家」という作品が収められているのですが、某大学でこの作品を勉強されている方から、そこに登場する隈重信の愛した庭石「竜の口」を是非見たいとのコメントをいただいたのがきっかけでした。
その方は、その庭石が大隈庭園にあると思われて、大隈庭園のことをwebに載せていた私に連絡をくださったのですが、実際には大隈庭園ではなく、竹橋の毎日新聞社本社付近の土地がかつて雉橋と呼ばれており、そこに「竜の口」はあったようです。
この作品が書かれた当時、雉橋にはフランス大使公邸があり、それ以前には大隈重信邸があったことから、クローデルの時代にも「大隈伯が愛した『竜の口』」が残されていたというわけです。
今もどこかに「竜の口」が残されているのかどうかは、結局わからずじまいですが、ふとした縁でクローデル作品に出合えて幸せです。
クローデルの存在は一応知ってはいたけれど、こんな縁でもなければ、もっとずっとあとに読むことになったか、あるいは読まずに一生終わっていたかもしれないので。
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